ボディメンテナンス

腰痛になりやすい環境とは?

腰痛になりやすい職業はなんだと思いますか?

少し古いデータ(2001年)ではありますが、運輸職看護職で高い割合になっているそうです。

今回は、腰痛になりやすい環境とはどのような環境なのかを考えていきたいと思います。

そもそも腰痛とは

今年の5月に日本整形外科学会と日本腰痛学会の監修による「腰痛診療ガイドライン2019」が発刊されました。7年ぶりの改訂だそうです。

これによると、腰痛の定義を「部位」「有症期間」「原因」の3つの観点から定義しています。

ざっくり解説しますと、背中の肋骨の下からお尻の間に、少なくとも一日以上続く痛みのことです。場合によっては足に広がるような痛みを伴う場合もあると定義されています。

腰痛は、生涯で成人のおおよそ80%の人が経験するといわれています。

今、腰痛がなくても、いずれ発症してしまう可能性が非常に高いです。

また腰痛の有無が、その人の生活の質にどの程度影響するのかというちょうさがありますが。20代ではそれほど変わらないのですが、歳を重ねるほど生活の質の差が大きくなっていきます。若いうちはそれほど影響がなかったとしてもゆくゆく影響が出るのはわかっているので早めの対策が必要となります。

腰に負担のかかる姿勢

下の図は、姿勢ごとに腰にかかる負担の図です。真っすぐ立っているときの負担を100としたとき、椅子に座っているだけでも1.4倍の負担が腰にかかります。前傾で重いものを持つのは2.2倍座って前傾で重いものを持つと2.7倍です。

これらの姿勢によるものは、筋力を鍛えたとしても関節自体に負担がかかってしまうので、力自慢の人ほど注意が必要です。鍛えることのできない部分ですので、筋力がある方が重いものを持つ分、関節への負荷量を上げてしまい腰痛につながることがあります。

重い荷物を持ったり、長時間座ったりする仕事は腰にかかる負担は多くなりそうですね。このことからも運輸職に腰痛が多いというのは納得です。また、人を抱えたりする看護職や介護職にも腰痛が発生しやすいと言えるでしょう。

腰痛の危険因子

職業性腰痛のガイドラインでは、「腰部への身体的負荷が大きい作業は発症の危険因子(推奨度B)」に対して「腰痛の発症と遷延に心理社会的因子が関与(推奨度A)」となっており、心理社会的な要素が重要視されるようになってきました

痛みは、脳が感じます。もうちょっと砕けて言うと、腰の細胞が痛みの刺激を神経を伝って脳の視床という部分まで伝えたときに痛いという感覚が生じます。ですので、脊髄損傷で神経が切断してしまっている人は、正常な経路を通りませんので健常者と同じような痛みを感じることができません。(代わりに神経性の痛みが生じたりすることもあります。)

ところが、慢性腰痛を抱えている人の痛みは高度な思考をつかさどる前頭葉が活動するそうです。前頭葉の中でも、不安やストレスといった、自分に好ましくない感情を抱いたときに強く活性化する前帯状回が活動するそうです。実際、慢性疼痛には、抗うつ薬など前頭葉に作用する薬や心理療法も有効です。そのことからも、慢性疼痛の発生拠点が思考の中に存在し、心の動きによってい起こる痛みであるという仮説すらあります。

少なくとも、慢性疼痛は思考や情動的な側面が大きく関与していると考えることができます。

心配し過ぎは痛みの敵

 痛いからといって、心配しすぎるとそれ自体が痛みの原因になってしまいます。

画像:理学療法ハンドブック シリーズ3 腰痛

腰痛心配し過ぎ度チェック

腰痛を自己管理するには正しい知識・心の持ち方が求められます。

そこで、心配し過ぎ度チェックというものがありますので、やってみてください。(出典:松平浩.日本運動器疼痛学会誌2013,5:11-19)

最近の2週間を思い出して以下の質問に「はい」か「いいえ」で答えてください。

1.腰痛が足の方まで広がっている

2.腰痛に加え、肩や首の痛みがある

3.腰痛のため、短い距離しか歩けない

4.腰痛のため、着替えがゆっくりしかできない

5.私のような身体の状態の人は、身体を動かし活動的であることは決して安全とは言えない

6.最近2週間は、心配事が心に浮かぶことが多かった

7.私の腰痛はひどく、決して良くならないと感じる

8.以前は楽しめたことが、最近2週間は楽しめていない

9は選択肢があります.全体的に考えて、ここ2週間に腰痛をどの程度煩わしく感じましたか?

→「全然感じない」「少し感じる」「中等度問題に感じる」 この3つは「いいえ」になります。

→「とても感じる」「極めて感じる」この2つは「はい」になります。

「はい」の数を1点として、かぞえてみましょう。


A.質問1から9の合計が3点以下→しっかり運動しましょう

B.質問5から9の合計が4点以上→まずは、痛みについてしっかり理解しましょう。その後、運動しましょう。

痛みと心身の関係

痛みは気持ちや身体の状態により影響を受けると言われています。痛みを増大させる理由には

  • 不快感
  • 不眠
  • 疲労
  • 不安
  • 恐怖
  • 抑うつ などが挙げられます。

精神的な緊張が高い職業や環境も腰痛発生の一因と言えます。仕事環境は整っていますか?仕事のやりがいが少ない、人間関係が悪い、仕事上のトラブル、過剰労働や心理的負担などの不具合がある場合、腰痛になるリスクがあると言えます。ほとんどの職場の問題点としてあげられるのではないでしょうか?80%の人がなるというのも納得ですよね。

その他の要因~環境要因~

その他にも腰痛になりやすい要因はあります。その一つが環境要因です。こちらは割となんとかなる問題ですので、もし自分の職場に当てはまる点があるとしたらできれば改善することをおすすめします。

  • 振動を伴う操作・運転
  • 寒冷・多湿な空間
  • 滑りやすい床面・段差
  • 暗く見えにくい空間
  • 狭く乱雑な空間

自分のデスク周りや車の座席の環境を整えることで腰への負担は大きく減らすことが可能となります。

温度が低いと怪我をしやすくなります。

狭すぎる環境は無理な姿勢をすることに繋がります。

環境的な要因は人が入れ替わったとしても変わらない部分なので会社をより良くしていくためには、早めに手を付けたいところです。

まとめ

慢性腰痛の要因として心理的な側面がある

腰痛予防には職場環境を整えるのが効果的

腰痛を防ぐことで生活の質がアップ

引用・参考文献

  • 荒木 秀明:非特異的腰痛の運動療法,医学書院
  • 渡邉 裕之:スパイナル・コントロール,NAP
  • 丸山 一男:痛みの考え方,南江堂
  • 栗原 里見:慢性疼痛の動向と今後の展望,東京成徳大学臨床心理学研究
  • 松平 浩:日本人勤労者を対象とした腰痛疫学研究,日本職業・災害医学会会誌
  • 福原 俊一:腰痛に関する全国調査,株式会社日本リサーチセンター
  • 松平 浩:職場における腰痛の発症原因の解明に係る研究・開発、普及,独立行政法人 労働者健康福祉機構
  • 栗原 章:職業性腰痛の現状と展望,日本腰痛会誌
  • 帖佐 悦男:職業性腰痛の疫学,日本腰痛学会雑誌