訪問リハビリでは高齢者の方を担当することが多いです。
その中で、結構な割合でいるのが、背中が曲がっているのをなんとかしたいというような方です。
背中が曲がると、周りからの視線が気になりますよね。
実はそれだけではなく、歩く際に無理に力が入ったり、転びやすくなったりと悪いことばかりです。
今回は、どうして背中が丸くなってしまうのか。
そして、丸くなってきたときの対処法を中心に書いていきたいと思います。
目次
どうして背中は丸くなるのか?
まず、問題を解決するためには、その問題を分析していく必要があります。
背中が丸くなるとは、いったい体の中ではどのような問題が起きているのでしょうか?
多くの方は、背中が丸くなるのを、年齢のせいだとか背骨が変形しているからと考えがちです。
年齢のせいというのは確かにあるかも知れませんが、それだけでは問題の本質にはたどり着けません。
年令を重ねても、背中が丸まる人もいれば、しっかりのびているかたもいますよね。
それならば、背中の丸さを年齢のせいにするのは無理がありますよね。
では、何が問題なのでしょうか?
一番の原因は筋力低下です。
筋肉が弱ってしまうことで、背中をまっすぐに保つことが難しくなり、背中が丸まっています。
実は背骨は、筋肉の支えなしに積み重なるだけだったなら、皆さん背中が丸まってしまうって知っていましたか?
背骨の作りは、骨である椎体と骨の間の緩衝材である椎間板からなります。
他にも靭帯などのいろいろな組織によって構成されていますが、ちょっとおいておきましょう。
骨の柱である椎体は切り株のようなかたちをしています。
しかし、その切り株は、体の前のほうが高さが低く、後ろのほうが高さが高いです。
なので、筋肉の支え無しで積み上がってしまうと必ず、背中は丸くなっています。
そのようなつくりになっていますので。
なので、背骨をまっすぐに保つためには背中の筋肉がちゃんと働く必要性があります。
背中の筋肉が適切に働かなくなるために、背中は丸くなっていくのです。
高齢者でも背中が伸びるか見極めるポイント
そうはいっても年をってしまって、骨が変形しているからもう伸びないわよ。
そのように相談される方もいらっしゃいます。
そんな方に、一度確認していただきたいことがあります。
それは、仰向けで横になったときにどれくらい背中が伸びるのかということです。
本当に背骨が変形している人の場合、頭を床につくことができません。
これで、楽に寝ることができるのであれば、筋肉さえ鍛えれば改善の余地があるということになります。
少なくと、寝ているときくらい背筋が伸びる可能性はあると言えます。
重力さえなければ、それくらい背筋が伸びるということですので、重力に負けないくらい筋肉をつけることが重要となるのです。
なにをすればいいの?
重力に負けずに背筋を伸ばす筋肉のことを抗重力筋といいます。
そのような抗重力筋が働けるような環境を作っていくことが重要です。
そうきくと、背筋をやればいいのね?と思う方もいると思います。
しかし、背中が曲がってしまう方の場合、いきなり筋トレをしても効果が出にくいです。
殆どの方は、筋力を発揮できない体の環境になっている可能性が高いです。
例えば、子供の頃に椅子に座った人のおでこを指で抑えるだけで、人は立てなくなる、という遊びがあったかと思います。
その椅子から立つことのできない人は、筋力が弱いわけではありません。
単に重心の位置が後ろのままなので、体を持ち上げることができないだけです。
その人を立たせるためには、重心を前に持ってくるようにすることが必要で、足の筋肉を付ける必要はありません。
そこで、直していく必要があるのは上体の重心の位置の補正が必要となります。
背中が丸くなってしまう人というのは、旨より上の体幹が丸くなった位置で固まってしまっているのです。
なので、上の背骨を伸ばしていくストレッチが必要となります。
やり方としては、左右の肩甲骨をしっかりとよせてあげましょう。
僕たちの言葉では、「抗重力伸展活動を高めていく」というような言葉になります。
この活動は、単に筋力を改善するだけではなく、神経の通りを良くしたり、柔軟性を高めたりして、体の使い方を変えていくことを意味します。
台所仕事にはバランスが必要
背中が丸くなったことで、台所仕事がうまくいかなくなる人もいます。
90代の方で、担当した患者さんがいます。
その方は腰椎圧迫骨折で、背中が丸くなったとお話されていたのですが、ベッドに横になったときには、立っているときよりも体は伸びていました。
なので、背筋はもう少し伸びるかなと当たりをつけました。
そして、台所仕事をするためには、両手を離して立ち続けるバランス能力が必要です。
背中が丸くなると、バランスを崩したときに立て直す力が弱まってしまいます。
そこで、リハビリで行うのは、
1.上位胸椎、肋骨の可動性改善
2.広背筋の筋緊張の緩和
3.菱形筋、僧帽筋下部線維の促通
これを行うだけで、初回から背筋が伸びてきました。
背筋が伸びると、歩き方も変わります。
初回介入で変化しますが、時間が立つともとに戻ってしまいます。
それは、あたりまえで、あくまで重心の位置を整え、今まで使えなかった筋肉を使えるようにしただけだからです。
今まで使えなかったので、筋力としては弱っています。
なので、疲れてくるとその筋肉はサボります。
サボると、また、重心の位置が崩れてきます。
リハビリを繰り返しながら、普段の生活では、疲れないように筋肉を鍛えていきます。
そうすると、リハビリの後の数日で体が丸くなった人が、数日、数週間、そして数ヶ月と、だんだん体を伸ばして過ごせる長さが伸びてきます。
そして、いずれリハビリがなくても背筋を伸ばしたまま生活できるようになっていきます。
疲れを溜め込まなければ、そのままの状態が続きます。
ちょっと頑張りすぎたな、というときだけ、リハビリの内容を自分で行っていただければ自分でいい状態を保つことが可能になります。
まとめ
背筋を伸ばしたいのであれば、最初は柔軟性を高め、次に筋力を使えるようにしていきましょう。
いきなり筋トレでも、効果はありますが、時間がかかってしまいます。
できるだけ楽をして、体に無理のないやり方でよくしていきましょう。