仕事の記録

幸運を育てる 0.05

 2月12日。中途半端なタイミングに中途入社。

入社初日。久々の感覚。緊張しかしない。

モチベーションは高いのか低いのか。

僕は結局、家から近い会社を選んだ。

やっぱり、電車通勤はあんまりしたくないから。

頑張れば自転車で通える距離だ。

ユニホームは派手だけど、理学療法士が多いと聞いていたので、環境としては働きやすいはず。

でも、結局、働いてみないとわからない。

ある意味開き直っている。

初日は、自転車で通勤。

予定した時間よりもちょっと遅く到着する。

会社の扉を開ける。

そして、社会人として第2のスタートを切った。

なれない雰囲気。

基本的に元気で明るい。

こんなに若い人たちが多いとは思わなかった。

僕は、おばちゃんがいるような環境のほうが落ち着くので少し不安だった。

まるで、学校のような環境で、こんな職場もあるのだなと驚いた。

社員はほとんど20代。それでも一つの支部として営業していけるということは、純粋に仕組みが整っているということなのだろう。

そこそこ広いオフィス。オフィスと言うより事務所といったほうがしっくりくる。

最初の段取りを済ませて、業務で使うソフトの説明を受ける。

今どきは、出勤したらカードではなくスマホで出退勤を済ませる。

そして、一人1台パソコンが与えられている。

前の職場のイメージもあってか、パソコンは共有で使うものと思っていたが、ここでは違う。

非常勤で働いていたときは、タブレットを支給されていたが、ここではそれが無い代わりに自分のスマホの通信費が支給される。

それぞれの会社にそれぞれの文化とやり方がある。

それをイチから覚え直すのは本当に大変だ。

ここでのやり方を早く覚えること。

スムーズに仕事をすすめるためには、なれることだけ考える。

助かったのは、非常勤のときと同じ介護ソフト「カイポケ」を導入しているところだ。

使い方はなんとなく覚えている。

「カイポケ」は使いやすいイメージ。

非常勤のときはソフトの入ったタブレットを使わせてもらっていたが、今回は自分のスマホからインターネットを経由してソフトを使用する。

僕のスマホは果たして大丈夫なのだろうかと、心配になった。

購入してから2年近くたっている。

車を運転するときは、ナビをスマホで利用することも多かった影響か、かなり劣化してきているような気がする。

ここでの訪問は電動自転車なので、基本ナビはスマホに頼ることになるはずだ。

スマホの寿命を縮めてしまうことは間違いないだろう。

せめて、外に出て何かあったときのために社用の携帯電話を支給してほしいところだったけど、ないものは仕方がない。

一通りの業務の説明をうけ終える。

午後からは早速、新規の訪問を担当させてもらえるらしい。

初日から担当を持つとは思わなかったが、訪問経験者だから大丈夫だろうという判断だったらしい。

初日から、訪問の現場に出させてもらえるのはありがたかった。

実際に体を動かしながら、リハビリしていると利用者さんのことに集中できる。

余計なことを考えなくて済む。

やはり、気持ちの切り替えがつけられていないのか。

少しひねくれてしまっていたような気がした。

僕は気持ちを切り替えて、事業所を出た。

訪問リハビリでは必須アイテムがある。

まず、会社から支給される。「血圧計」「体温計」「聴診器」「パルスオキシメーター」

これはどこの会社でも変わらない。

ここだと、「レインコート」も支給されるのでありがたい。

会社によっては自前で用意しなくてはならない所も多い。

あとは、この時期だと防寒着。手袋。ネックウォーマー。など。

僕は、手袋はスキー用の手袋を使っていた。

これだと雨の日もいくらかマシだ。

後は、人によるがサンバイザーを使う人もいる。これを使うと、雨のときに助かる。

帽子の上にレインコートのフードをかぶるのもありだ。

あとは、長靴、レインブーツ。

自転車の訪問だと雨の日に対策するための物品を自分で揃えなくてはならない。

車の訪問だとそれほど必要ないが、自転車の場合は仕方がない。

その分、自分の給料に上乗せされていると考えるしかない。

あとは、個人的に用意しているもの。

レンチ。角度計。テーピング。サポーター。ペンライト。ボール。万歩計。消毒液。マスキングテープ。メジャー。雨の日用のジップロック。

これは個人差があるが、このへんがあると苦労は少ない。

ジップロックにはスマホを入れる。雨の日でも使えるように。

基本的に傘を使うことは少ないが、あると重宝する。

自転車に挿しておくことが無難だろう。

会社の物品を持ち出すことも可能だが、急に必要になったときに、次の訪問が一週間後となると、それまで利用者さんには待ってもらわなくてはならない。となると自前のものを用意したくなる。

そうなって、自分の訪問グッズは揃ってきたわけである。

さて、実際の訪問は初回が肝心だったりする。

誤解されがちなのだが、リハビリというものを歩く練習や機能訓練のことと思っている人は多い。

病院のリハビリに慣れてしまい、在宅のリハビリも同様のものと考え、「あの人は体をもんでくれない。」というクレームも起こったりする。

なので、初回はしっかりと説明をしなくてはならない。

リハビリはあなたの人生を良くするためのものですよって。

そのためにはリハビリの時間以外でも体を動かすこと。

特に週1回の介入の人ほど、その他の時間でどれだけ体を動かせるか、動かせるような環境を整えるのかが求められる。

最初の訪問のときに、毎日取り組むことのできるような活動を設定するのが望ましい。

その活動が、本人のやりたいことだとなおいい。本人のやりたいことだとほっといても続くからだ。

いわゆる、ストロングスリハビリテーション

僕の目指していた訪問リハビリの形。

週1回でも最大の効果を発揮できる形。

本当は、新しい職場で実現したかった訪問の形

この考え方を浸透させるのはなかなか難しい。でも、自分のリハをそのような形に持っていくことはできるはずだ。

訪問先に到着する。

思っていたよりも距離が遠い。自転車で20分位かかっただろうか。電動自転車だったこともあり、息はそれほど上がっていない。

自転車を止め、アパートの2階に上がる。

木造の趣がある建物が、階段を登るたびにきしんでいるような気がする。

訪問先のチャイムを鳴らしてそのまま入る。

訪問先によって玄関ルールが有る。

インターフォンを鳴らして入っていいとか。ノックしてまつとか。

訪問の契約の段階で、確認していることが多く、今回はチャイムを鳴らしたらそのまま入っていいということになっていた。

「おじゃまします。訪問リハビリの正村です。よろしくおねがいします。」

「入っていいよ。」

奥から男性の声が聞こえる。ちょっとしぶみのあるいい声だ。

靴を揃え、居間にあがる。

利用者の男性は、ソファに深く腰を掛けている。

僕はあいさつもそこそこに最初の説明を済ませる。

訪問リハビリの流れは、だいたいどこも一緒だと思うが、最初にバイタル測定をする。血圧や体温、血中の酸素濃度を測定する。ものの5分で終わる作業だ。

この測定により、その日の利用者に異常がないか確認する。

継続している方だと、その週に変わったことがなかったかなどもあわせて確認するが、今回ははじめましてなので、進めていく。

体温計を渡しながら、

「お熱を測っていただいてもよろしいでしょうか?」

と尋ねる。

「ちょっと腕がきかないから、挟んでもらっていい?」

腕の動きが悪い人のなかには、自分で体温計を挟むのが難しい人がいる。そういう人には、脇に体温計を入れてあげることもある。

特に片麻痺の方にはそのような方が多い。

今回は片麻痺ではないが、どうやら腕の動きが悪いのかと考えながら、襟から脇の位置を探る。

首元から見えたのは、胸にかけて広がる桜吹雪の入れ墨だった。

その時、僕がどんな気持ちだったかって?

「まじかよ・・・。」

<続く>

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