仕事の記録

幸運を育てる 0.06

今まで、短いながらもたくさんの利用者さんのリハビリを担当してきた。

会社の元社長さんだったり、お医者さんだったり、はたまたアルコール中毒の患者さんだったり、生活保護の方だったり、認知症の人だったり、神経難病の人だったり。

しかし、ヤクザを担当した事は今までなかった。

見た目で人を判断するのは良くないが、胸元からどこまで続いているのかわからないが刺青がガッツリ入っている。普通のかたぎの人間で、でここまで刺青が入っている人なんて聞いたことがない。

いやいやよくみろ。

両手の薬指が人より短くないか。

うん。間違いなく短い。

いや、ちょっとおかしな短さ、というより指詰めた後だ。

本物だよ。

訪問に行く前にそんな話聞かなかった。

事前情報で欲しかったぞ。心の準備というものがあるから。

というより、こんなクセの強めの人をいきなり担当させるんだね。

まー。管理者としては、担当してもらえるのであれば誰でもいいよな。

でも、僕がもし、ちょっと難のあるセラピストだったらどうするつもりだったんだろ。

それでもやっぱり行かせてみるしかないか。

経験つませて、どんな人でもリハに行けるようなスタッフになってもらわないと、会社としては困るからな。

とにかく仕事は仕事だからやる事はやらないと。

「何か希望はありますか。」

と聞いてみる。

「とにかく腰を揉んでほしい」

「それでは、体が良くなったら何かやりたいことがありますか。」

と質問するが特にやる気ない事はないとのこと。

これはなかなか手がかかりそうだ。

訪問の時に相手の情報を知るときのコツは、部屋の様子を見ることである。知らない人の家の中をジロジロ見るのは失礼ではあるが、相手のことを知るためには必要なことだ。ご本人の趣味や家族の趣味のもの。そして家族の写真などが貼られていることが多い。自分の部屋を見返してみても本が好きだったら本棚に本が詰まっているし、趣味のグッズなどがあったり、後は家族の写真、利用者さんに多いのは賞状等が貼られていたりする。

そういった家の状況を手がかりに相手のことを知る。

会話のきっかけにすると、案外話は膨らむものだ。

今回の利用者さんの場合だと、居間には特に会話のきっかけになるようなものはないが、奥のほうに写真が貼られている。

家族との写真だ。

その写真の事について聞いてみるが、あまり話は膨らまなかった。

この方は、現状、男一人暮らし。

あまり深く突っ込むのも難しい。

男性の一人暮らしの場合だと会話を続けることが大変だったりする

その点、女性の訪問リハの場合だと、こっちから話しかけなくても向こうから自分のことを教えてくれることも多いので、口下手な自分にとっては助かったりする。

相手の話したい話をするのがポイントだ。

男性の場合だとそもそも話をあまりしたくないと言うケースがあるので全くもって大変だ。

会話は弾まないが、段取りにそってリハビリを進めることとした。

リハビリの時間に利用者さんの体の状態を確認する。

筋力、関節の柔らかさ、寝返りや起き上がり、立ち上がりやあるきがどの程度のレベルで行えるか。

痛みの場所はどこか。筋肉の状態はどうなっているか。感覚がおかしくなっていないか。

他にも確認したほうがいい部分はたくさんあるが、要所をきちんと抑えていく。

そして必要な運動を利用者さんと一緒に確認する。リハビリがない間の時間にどうやって過ごすか、そういった話をした。

今回のケースでは、そもそもお家の中で動く量が少ないので、ちょっとでもいいので動いてみてくださいという話だけで終わってしまった。

正直、こうしてください、ああしてくださいと言うのは簡単だけれど、実際に利用者さんの行動に結びつくのは難しい。

あまり、いい介入とは言えないと感じていた。

できることなら、相手の方から、こういうことならできるとか、その運動ならできそうだね、という言葉を引き出せていればよかった。

しかし、そのような会話をすることができなかった。

初回のリハで関係性を作ることができなかったんだ。

一発目でうまく人もいれば、うまくいかない人もいる。

今回は時間がかかるケースだと開き直る。

週一回しかないので、今回だけじゃ成果は出ないだろう。

だが続けていくうえで成果を出していければいいと思う。

「次回もよろしくお願いします。」と挨拶をし、部屋を後にする。

正直あまり良いリハになったとは言えない。しかし、大きな失敗をしたとも言えない。

合格点ではないが落第点でもないと言うような結果だと自分で反省する。

頭っから相手に不快な思いをさせずには済んだ。

それだけでもひとまずよしとしよう。回数を続けていくだけでも関係性と言うものは作られていくんだ。

そのためにはまたお家に来てもいいよと言う風に思ってもらえるだけでもよしとするべきだろう。

相手があることだから自分のペースだけではうまくいかんさ。

気楽に行こうぜと事業所に向かって自転車を漕ぐこととした

とりあえず、初日から訪問に出ることができただけでもよしとするべきだろう。

明日からは他の担当している人から、引き継ぐ人の同行訪問が始まる。

週に5日訪問専従でやっている人がどのようなリハを提供できているのか、見学できる機会はなかなかないので正直ありがたい。

この機会に訪問のプロのリハビリをしっかりと勉強させてもらおう。

勉強会に出ることと、現場でやっていることにはギャップがあるはず。そのギャップをどうやって埋めるかがセラピストの実力になっているはずだ。

明日の訪問も楽しみだ。

<続く>