今回紹介するのは、2012年に星海社新書として発行された『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?』という本を改定し、文庫化したものです。
改定で、タイトルが変わる本は珍しいですが、損益分岐点と言われるとピンときづらいですよね。
『働き方の損益分岐点』は作家の木暮太一さんにより2018年の4月に発行されています。
この本の内容自体は、2012年だろうと2020年だろうと、さらにいうともっと左記の未来であっても変わらないような、労働に対する本質的な考え方について書かれています。
自分の働き方について、疑問を抱えている人にはぜひ一度読んでいただきたい一冊です。
この本から学ぶことができたのは主に下の3つになります。
- 労働力の価値とは
- 損益分岐は遠ざかる
- 資産を作ろう
それでは、これらの内容について解説して言いたいと思います。
目次
労働力の価値とは
最初にこの本の良いところは、自分の給料はどのように決まっているのかとい問を投げかけてくれるところです。
自分が生み出す、売上に対して決まる?仕事の成果に応じて決まる?
なんとなくそのように考えている方もいるかも知れませんが、その通りに決まっているわけではないというのは、不満を抱えている人はみな感じているところだと思います。
だからこそ、不満が溜まっていくのだとは思いますが。
それでは、どのようにして私達の給料は決まっているのでしょうか。
この本はマルクスの『資本論』をベースに書かれています。
『資本論』でも解説されていることですが、私達が給料としてもらっているのは、労働力を回復させるための必要経費なのです。
仕事をする前の体力が100だったとして、一日働くと体力が0になってしまうとしましょう。
次の日までに、その体力を100にするために支払われているのが必要経費としての給料になるわけです。
必要経費は、その日の食べる食事の金額であり、睡眠を取るための部屋の値段であり、その日来てくる服の値段になります。
仕事をしていくとストレスが溜まるので、月に2回ほど、飲み会にいく分のストレス発散の費用を渡してくれます。
なので、一ヶ月働いた上の必要経費を渡しているので、一ヶ月働いたあとにお金が貯まらないのは当たり前のことになります。
損益分岐点は遠ざかる
仕事をしているうえで、ほとんどの人は現状に不満をいだいているのではないのではないでしょうか?
逆に満足している状態もあると思います。
本書では、満足度の状態を「自己内利益」で表しています。
不満を抱えている状態が、自己内利益がマイナスの状態。
満足している状態は、自己内利益がプラスの状態です。
それでは、この自己内利益はどのようにして決まるのでしょうか?
簡単な方程式があります。
[年収・昇進から得られる満足感]ー[必要経費(肉体的・時間的労力や精神的苦痛)]=自己内利益
この方程式をもとにすると、年収を上げていけば、自己内利益は増えていくと考える方もいるかも知れません。
しかし、年収が増えるということはそれに伴う必要経費が増えていくということでもあります。
そして、もう一点忘れてはならないのは、年収が上がることによる満足感は、最初は高くても徐々に下がってしまうということです。
満足度は下がるのに、受ける精神的なストレスや肉体的な疲労は変わりません。
つまり、自己内利益はマイナスになってしまうのです。
年収300万の人が、「昇進したら年収350万になって豊かになれるのに。」と考え努力し、昇進したとしても、いずれその状態に満足することはできなくなります。
そしたら、「次はもっと昇進して、年収400万を目指すぞ。」と努力し続けるのですが、ずっと目標値は遠ざかっていきます。
この自分の中で満足できるだろうと予測する到達点のことを働き方の損益分岐点と表現しているのですが、がむしゃらに働いても、損益分岐点は遠ざかるだけです。
この話の中に出てくる、熱帯雨林の話が参考になりますので引用させていただきます。
生存競争が激しい熱帯雨林に生息している樹木は、どの木も、隣の木よりも多くの光を得ようと上へ上へと伸びる。
ところが、それでは「影」に隠れてしまう木が出てくる。その影に隠れた木々は、太陽の光を得ようと、他の木と同じ高さまで伸びようとする。もしくは、いちばん高く伸びて、光を独り占めしようとする。
~一部略~
自分だけの太陽の光を得ようと競い合って伸びても、誰も考えず「当初」の高さでとどまっていても、「得られるもの」は同じだったのである。熱帯雨林に生息している樹木は、なんと無駄なことをしているのだろうかーー。
資産を作る働き方
それでは、どのようにして働くことが求められるのでしょうか。
本書では、がむしゃらに目前の残業代を求めるような働き方をしてはいけないと解説しています。
そのような働き方は、そのときはよくてもその場限りの働き方にしかならないのです。
では、どのように働くことが重要かというと、資産を作るような働き方を白と言っています。
具体的にはどのような働き方かというと、目先の給料の高さではなく、将来的にもいいるような働き方をすることをすすめています。
具体的な方針では、変化の遅い業界を選ぶことを提案しています。
変化の早い業界では、今日積み上げたことが、一年後も有効である確率は非常に低いからです。
それに引き換え、成熟している業界では、今日、身につけたスキルや経験が無駄になる可能性が低いからです。
今日一日働いたときに、どれくらい資産となるような仕事ができるのかということを振り返りましょう。
一日の、損益計算書を元に動くのではなく、貸借対照表の考えを元に、資産を積み重ねていくという視点を忘れないようにすることが重要です。
まとめ
この本を読んで重要なポイントは、
1、給料とは、その日の労働力の再生産の費用である。
2、粗損益分岐点はどんどん遠ざかる。
3、資産を作るような働き方をしよう。
と感じました。
実際に本書を読むことにより考えが非常に深まりますので、一度読んでみることをおすすめしたいと思います。