理学療法

関節可動域訓練の治療説明。「固くなっちゃいますよ」で終わってませんか?

関節可動域練習をする際の治療説明は皆さんどうしてますか?

患者さんに説明するときに「固くなるから」だけで終わっていませんか?

リハ関連職や看護師は、関節の動きに制限が生じることで生じるリスクのことを知っています。

なぜなら、実際に関節の動きが悪くなって、大変な目にあっている人を自分の目で見ているからです。

今まで健康だった人が、怪我をしたときに「固くなるから」という理由で其の大変さをイメージすることはできるでしょうか。

その説明では、患者さんに納得していただくことは難しいと思います。

今回は、患者さんにどのような言葉をかければ納得の感情までを引き出すことができるのかを考えていきたいと思います。

なぜ納得でなくてはならないのか

治療のオリエンテーションの際には、納得してもらうことが重要です。

なぜ納得が重要なのかというと、言葉をかける目的は患者さんに行動してもらうことだからです。

納得させずに、説得だけした場合どうなるかを考えてみましょう。

患者さんは自分の治療の目的が、言葉上ではわかっていても、気持ちの上では腑に落ちない状態に陥ってしまいます。

場合によっては、理不尽なことをされているように感じることもあるかもしれません。

理不尽なことをされていると感じたら、誰もが嫌がるはずです。

そのような場合、セラピストから見ると患者さんは駄々をこねているような印象を受けるのではないでしょうか。

一度、説得と納得の違いを確認してみましょう。

  1. 説得・・・押しのアプローチ(患者を押し切る)
  2. 納得・・・引きのアプローチ(患者に歩み寄ってもらう)

説得では、理由をとにかくあげつらいます。

「固くなるから」「後々大変になる」「今やっとかないとあとが大変」

このような言葉のかけ方で、患者さんに行動していただくことは可能でしょうか?

説得を受けた患者さんは、場合によっては反発することもあるでしょう。

「もともと体は固かったから大丈夫」「あとになったら、がんばればいい」「いたくなくなってからやる」などなど。

説得では、情報が他人事になってしまいます。自分ごととして理解できるような言葉がけが必要となります。

そもそも固くなっちゃうって、どんな状態をイメージしてるんかね?

治療の説明に「体が固くなっちゃうから」と使う場面を度々見ます。

しかし、その人の言っている「体が固くなる状態」と説明を受けている人にとっての「体が固くなる状態」には大きなずれがあると感じています。

「体が固くなる」という言葉で伝えたいのは、「関節の可動域が悪くなる」という情報だと思います。

しかし、それを体が固くなっちゃうからで、同じように伝わるのでしょうか?

まず、人によっては、「固さ」を動く範囲ではなく、物質自体の固さと捉える可能性もあります。

そのような場合、固くなるからという説明では、非常に不十分な声掛けと言わざるを得ません。

そもそも、体が固くなることが悪いことなのかという点についても考えてみてほしいです。

この体が固くなるは、関節の可動域が狭くなるという意味です。

関節の可動域にも個人差が有り、単に可動域が狭くなるだけでは、困りません。

では、どのような場面で困るのかというと、可動域の狭さから行動や体に悪影響が生じたときです。

その情報を伝えることが大切だと思います。

納得を生む秘訣は自分ごと

その人にとっての生活上の悪影響を教えてあげると、関節の動きが悪くなることのリスクを感じてもらいやすくなります。

ここの関節が固くなると、〇〇のような大変な目に合うかもしれませんよ。

という言葉を、その人の環境因子や個人因子にあった言葉に言い換えましょう。

例えば、主婦のAさんが腕を骨折してしまったときに関節可動域運動をしなくてはならなかったとしましょう。

セラピストは、「体が固くなっちゃうから、やらないとだめですよ。」と声をかけます。

しかし、Aさんは体が固くなって何が良くないのかピンときていません。

それでは、治療の際に不満が溜まっていってしまいます。

そんなときに、どのような声がけが望ましいのでしょうか。

Aさんには、主婦という役割があります。それに、応じた言葉を考えるのがいいと思います。

PT「このまま、放っておくとAさんの腕の動きは悪くなってしまします。例えば、こういう動き(前腕の回内・外)が悪くなったら、何が大変になると思いますか?」

Aさん「??」

PT「Aさんは、料理はしますか?」

Aさん「しますよ。」

PT「料理にはどんな動きがありますか?」

Aさん「包丁で物を切ったり、痛めたりですかねー?」

PT「じゃあ物を切るとき腕がここまでしか動かなかったらどうですか。」

Aさん「なんか、すごい大変そうです」

PT「そうですね。なので、ここの動きを良くしておいたほうが後々楽になりますよ」

あくまで、一つの例ですが、このような姿勢で説明にあたりたいですね。

セラピストに依存させてはいけない。

セラピストは患者様が自立していけるような手助けをしていかなければならないと思います。

そのためには、言葉のかけ方が非常に重要となります。

自分の言葉の使い方が、「説得」になっていないか。

患者様に「納得」していただけているのかを日々改めて考えていく必要があると感じています。

私達の仕事は、体を扱う仕事でもありますが、言葉を扱う仕事でもあります。

人の体について、勉強する機会は多いですが、人を行動させるような言葉の使い方を勉強する機会は少ないのではないでしょうか。

どのような声掛けをすれば、その人が動きたくなるのかを「納得」という感情から考えてみてください。

そのような努力を続けることで、患者さん自信に動いてもらえるような、言葉のアプローチができるようになっていくと感じています。